インナースリーブ(inner sleeve)

インナースリーブとは
インナースリーブ(inner sleeve)は、ジャケットの内側に入り、盤が直接触れる袋状のスリーブである。通称「内袋」も同じものを指す。盤のラベル面と溝面を、ジャケットの紙やほこりから隔てる最後の一枚である。
工場付属の内袋は紙製が多い。交換用には、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、紙の外側にポリライナーを貼ったハイブリッド型(ライスペーパー系を含む)が流通する。保存ガイドでは、溝付きディスクの保護に内袋の選択が挙げられ、紙袋を高密度ポリエチレン製スリーブへ替えることが示されている。オリジナルの紙袋を残す必要がある場合は、ポリエチレン製スリーブを紙袋の内側に入れる運用も取られる。
素材ごとの性質
内袋は、盤の溝面とラベル面に直接触れる。素材の違いは、ホコリの付着、擦れ、帯電のしやすさに表れる。
紙袋は安価で通気性がある。一方、経年で繊維くずを出し、貼り合わせの継ぎ目や切り口の端が盤面をこすることがある。紙は摩擦で帯電しやすく、ホコリを引き寄せやすい。無ライナーの紙は、出入りのたびに表面へ擦り傷(スリーブマーク)が付きやすい。
ポリエチレン系(PE、HDPE)は表面が滑らかで、紙くずを出しにくい。保存指針では、溝付きディスクの内袋を高密度ポリエチレン製スリーブへ替えることが示されている。帯電を抑える目的で、抗静電設計のものが流通する。純 PE は薄く、盤に張り付きやすいと感じる場合もある。
ハイブリッド型は、紙の外側にポリライナーを貼るか、HDPE の間にライスペーパー層を挟んだ三層構造である。紙単体より盤面への摩擦を減らし、袋の形を保ちやすい。長期保管や、これから何度も針を落とす盤で選ばれることが多い。
いずれの素材も、内袋を替えても溝の摩耗や深い傷は元に戻らない。内袋は汚れや擦れを予防する用途のもので、すでに付いた損傷は修復できない。
内袋が起こすノイズの見分け方
内袋が汚れたり静電気を帯びたりすると、溝にホコリが入り、ノイズの原因になりうる。静電気とホコリの記事で触れるように、除去で軽くなるノイズと、溝の損傷で消えないノイズは切り分ける。
紙袋の繊維屑は、帯電した盤に張り付きやすい。こうした異物は、クリーニングや乾式ブラッシングで軽減できる場合がある。内袋を抗静電タイプに替え、試聴前にブラッシングを行うと、リードインのクラックルが一時的に減る例もある。一方、同じ位置で同じポップが繰り返すなら、内袋ではなく溝側の問題である。
保存用の容器は、静電気を帯びやすいものを避けることが示されている。内袋と外装スリーブの組み合わせも、帯電とホコリの再付着に関わる。
中古 LP の内袋を点検する
中古 LP を想定する。ジャケットから取り出すと、茶色い紙袋に盤が入っている。袋の内側に紙くずが付き、盤面に細かい繊維が見える。抗静電のポリライナー付き内袋に替え、クリーニング後に試聴すると、リードインのクラックルは減る。主因は汚れと静電気だった可能性が高い。曲の同じ位置で繰り返すポップが残るなら、内袋ではなく溝の傷を疑う。
買うときの確かめ方
内袋は等級や版の判断材料にならない。買う判断は、袋の素材より、その盤のリードインで切る。まず盤を取り出し、ラベルと溝付近を斜め光で見る。
目に見える埃、繊維、指紋の油膜、線状の擦れがないか確認する。外観がきれいでも、溝奥の微粒子は残っていることがある。内袋の素材は、このあとで読めばよい。
次にリードインと曲間の無音部を聴く。ザラつきが広く、位置が毎回ばらけるなら、ホコリや帯電の可能性が高い。クリーニングやブラッシングのあと、同じ箇所でもう一度聴き、変化を見る。改善しない同位置のポップは、グルーヴウェアや傷を疑う。内袋を替えても鳴りが劇的に変わらないことは珍しくない。
盤の状態が読めたら、内袋を点検する。紙くず、破れ、カビ臭、盤に張り付いた汚れがないかを見る。紙袋の内側がざらつく、繊維が盤に付くなら、サイズの合う抗静電内袋への交換を検討してよい。盤を出すときは溝面を指先で触らず、ラベル穴を支えてゆっくり動かす。
ジャケットとは別に、内袋だけ替えて盤を守る保管ができる。盤をジャケットから分け、内袋入りの盤を外装スリーブの後ろに置く方法は、リングウェアの進行を抑える目的でも使われる。