回転数(RPM)

回転数とは
回転数(RPM、revolutions per minute)は、盤が 1 分間に何回転するかを示す単位である。レコードは一定の角速度で回る。回転数そのものは、外周から内周まで変わらない。
現行のビニールでは、直径と回転数の組み合わせでフォーマットが決まる。12 インチ・33⅓ RPMが LP(long play)の標準、7 インチ・45 RPMがシングルの標準である。78 RPM はシェラック時代の速度で、1940 年代以降のビニール主流からは外れた。LP 用マイクログルーヴは 33⅓ RPM、7 インチのシングルと EP は 45 RPM(一部 33⅓ RPM)と規格上整理されている。
同じ曲でも、回転数が違えば 1 面に載る時間と、針が拾う溝の「通過速度」が変わる。回転数はスペック表記以上に、音の解像度と収録時間のトレードオフを決める軸である。
回転数が決める解像度と収録時間
角速度と線速度
針が拾うのは回転数そのものではなく、溝が横切る速さ(線速度、linear velocity)である。角速度が一定でも、外周ほど針の下を通過する溝は長く、内周へ向かうほど短くなる。
33⅓ RPM の 12 インチ LP では、外周付近で秒あたり約 510 mm、内周付近で約 200〜210 mmの線速度になる。同じ半径なら 45 RPM は 33⅓ RPM より回転が速いぶん、線速度はおおよそ 1.35 倍になる。高音は溝の細かい振れとして刻まれるため、線速度が高いほど同じ周波数を物理的に描きやすい。プレス工程で述べた内周の不利は、回転数が低い LP ほど顕著になる。
収録時間との引き換え
再生時間は、使える溝の長さを回転数で割った値に比例する。10 インチ 78 RPM 盤は 1 面およそ 3.5 分が上限に近く、ポピュラー曲はその枠に収められた。33⅓ RPM の LP は、微細な溝(マイクログルーヴ)と大径盤の組み合わせで 1 面 20 分前後まで伸ばせるようになった。
45 RPM は同じ直径でも回転が速いぶん、1 面に載る時間は短い。1949 年に RCA Victor が発売した 7 インチ 45 RPM シングルは、盤面設計上は 1 面あたり最大 8 分程度まで載せられるが、ポピュラー曲は 1 面 3〜4 分前後に収められることが多かった(整理)。交響曲のような長尺作品は複数枚の 45 に分割され、LP 1 枚に収める利便性は LP 側にあった。Columbia の 33⅓ LP と RCA の 45 シングルが規格の主導権を争った 1948〜1950 年の「速度戦争」(War of the Speeds)も、この役割分担の確定過程である。
45 RPM が音に効く場面
45 RPM の利点は、同じサイズでも線速度を稼げることにある。7 インチ 45 は 1 曲 1 面のシングル向けに最適化され、大口径のセンター穴はジュークボックスやチェンジャー向けの積み重ね再生にも適した。12 インチ 45 RPM(マキシシングル、DJ 向け 12 インチなど)は、1 面 12〜15 分程度まで伸ばせる。45 RPM の EP は溝幅を抑える代償としてレベルを落とす(減衰、圧縮する)場合があるとされる。収録時間を延ばすほど、カッティング側の余裕は減る。
2000 年代以降のオーディオファイル向け再発では、オリジナルの 33⅓ RPM LP を 12 インチ 45 RPM に分割し、1 面の収録時間を半分以下に抑える版がある。枚数こそ増えるが、外周も内周も線速度を 45 RPM 側へ引き上げ、内周の高音ロスを抑える意図が読める。回転数だけを上げても、音質が自動的に上がるわけではない。プレス工程のカット、めっき、プレス、マスター音源の質が変わらなければ、45 RPM 表記は物理的余裕の話に留まる。
33⅓ RPM LP は、1 枚でアルバム全体を聴ける利便性と引き換えに、長い面ほどカット・レベルを下げる圧力がかかる。18〜20 分を超える面では、低音と音量の制約から音が痩せやすい。これも回転数と収録時間のトレードオフである。
同一タイトルの 33⅓ と 45 RPM
同タイトルが 12 インチ 33⅓ RPM LP(1 枚 2 面)と 12 インチ 45 RPM(2 枚 4 面)の両方で出ている場合を想定する。45 RPM 版は各面が短く、内周のハイハットとボーカルの歯擦音が LP 版よりシャープに聴こえる一方、枚数とコストは増える。どちらが優れているかは、聴き方と予算によって変わる。
回転数と収録時間の確かめ方
回転数は、新しさや高級さの印ではない。先に確かめたいのは、その盤が想定する回転数と、1 面に何分載っているかである。
ラベルの 33⅓ RPM / 45 RPM / 78 RPM 表記、直径(7 / 10 / 12 インチ)、品番の系列を読む。7 インチ 45 は大口径のセンター穴、LP は小口径の穴で、物理サイズと回転数はセットで見る。ジャケットの収録時間表記が 1 面 25 分超なら、33⅓ RPM LP としては長めであり、プレス工程のカッティング制約が音に出やすい。
届いてから、ターンテーブルの速度設定を表記どおりに合わせ、外周と内周で高音の立ち上がりを聴き分ける。同タイトルで 33⅓ と 45 RPM の両方があるなら、外周と内周の同じ曲を交互に聴いてよい。回転数を間違えて再生するとピッチがずれる。33⅓ 盤を 45 RPM で回せば約 1.35 倍速、逆なら約 0.74 倍速になる。
45 RPM シングルか 33⅓ LP かは、曲数と聴き方の選択である。1 曲を解像度重視で聴くなら 45 RPM、一枚で通して聴くなら 33⅓ RPM が向く。その盤が今日の再生環境でどう鳴るかで決めればよい。