品番(catalog number)

品番とは
品番(catalog number、カタログナンバー)は、レーベルや流通会社が商品を管理するために付ける識別コードである。ジャケットの背表紙や表紙、盤面中央のラベル、帯(OBI)に印刷される。同じ曲名、同じアーティストでも、国、モノラルとステレオ、編集、再発のたびに品番は変わりうる。流通上の商品名に近く、聴く側にとっては「どの版、どのミックスを選ぶか」の入口にもなる。
マトリクス・ランナウトの番号とは別物である。品番は流通・販売のための表記で、ラベル外周の無地部分(デッドワックス)に刻まれるマトリクス番号は製造・カッティングの記録である。版情報の登録上、カタログ番号と matrix/runout は別の欄で管理される。品番だけ一致しても、工場、カット、スタンパー世代が違えば音は変わりうる。
接頭辞が示すもの
品番の接頭辞(プレフィックス)と数字の並びは、レーベルごとに決まった意味を持つ。国やフォーマット、シリーズを読む手がかりになる。他レーベルの規則を転用すると誤読しやすい。
US Columbia では、1958 年のステレオ導入以降、モノ LP は CL-、ステレオ LP は CS- が主流である(Masterworks 向け MS- など例外系列もある)。ステレオの標準 LP は CS-8000 番台から振られ、数字のブロックは発売年とおおむね対応する(例:CS 8800 番台は 1963 年頃)。1962 年頃からラベル上部に CBS 表記が加わるなど、接頭辞と数字だけでなくラベルデザインも世代の手がかりになる。
UK Parlophone では、モノ LP に PMC、ステレオ LP に PCS が使われる。1960 年頃からステレオは PCS 3000 番台の別系列で始まり、1966 年に 7001 から mono / stereo が同じ数字を共有する方式へ移行した。CPCS は輸出盤用の接頭辞で、米盤再発の CPCS 101 などが例として知られる。UK 盤の品番体系は US Capitol とは別系列である(Parlophone の PMC 1202 と Capitol 番号は対応しない)。
日本盤は、1989 年制定の日本レコード協会規格 RIS 502以前から各社が独自体系を持っていた。東芝 EMI では 1976 年頃以降 EAS 系列が広まり(国内盤の接頭辞と年代)、キャピトル系は CP / CTP、邦楽でも TP 系などが使われた(邦楽シングルの接頭辞解説)。1989 年以降の規格品番は、会社コード 2 文字、形態分類 1 文字、ジャンル 1 文字と 5 桁のシリアルで構成されるが、1989 年以前に付番された LP 在庫や再発は旧番号のまま流通し続けることが多い。
品番と版の関係
品番は「どの商品として売られたか」を示すが、「どの工場で、いつ、何枚目にプレスされたか」までは示さない。
同じ品番でも、プレス工程の差(カットの世代、スタンパーの摩耗、工場)で音は変わりうる。Columbia の CS-8864(1963 年頃の US ステレオ番号帯)一枚を取っても、品番から年代とフォーマットまでは読める。Terre Haute、Pitman、Santa Maria のどれで押されたかはランナウトの工場記号で判別する。Parlophone の PMC 1202(Please Please Me UK mono)でも、ラベル世代とマトリクス刻印を突き合わせなければ、1963 年初期 cut と後年の再発の区別は確定しない。
逆に、品番が違っても中身が同じ系列に属することがある。1966 年以降の Parlophone では mono と stereo が同じ 4 桁を共有し、接頭辞(PMC / PCS)だけがフォーマットを分ける。再発で品番が変わらないケースもあれば、新系列に振り直されるケースもある。Columbia は 1970 年に CS 9999 到達後、CS 1000 へ番号を戻したため、数字の大小と「初版/後年」の関係はレーベルごとにルールが異なる。番号だけで年代を断定しない。
国内盤では、原盤国の品番と日本の品番は一致しないのが普通である。帯とラベルの品番を並べれば、日本でどの編集、どの価格帯として流通したかが読める。ジャケット品番、ラベル品番、マトリクスの 3 点が食い違う場合は、別タイトルのジャケットと盤面が入れ替わった組み替え盤や製造ミスの疑いがあり、追加確認が必要である(ラベルの節も参照)。
品番から音をどう読むか
品番そのものが音質を決めるわけではない。品番が音に関わるのは、それが示す「どの版を聴くか」の選択を通してである。
接頭辞が mono / stereo を分けるレーベルでは、品番を読むことはミックスの選択に直結する。Parlophone の PMC と PCS、Columbia の CL と CS は、同じタイトルでも別の音響配置として聴く対象になりうる。With the Beatles の PMC 1206(mono)と PCS 3045(stereo)は、同じ曲集でも聴き方が分かれる典型例である。
品番の数字ブロックは、おおむね「いつ、どの系列で発売されたか」の年代目安になる。1960 年代初頭の CS 8400 番台と 1960 年代後半の CS 9200 番台では、リマスターの有無やテープ世代が異なりうる。1970 年の CS 1000 番台は番号リセットの再利用帯であり、数字の連続性だけでは年代を読めない。ただし番号の大小は音質の優劣とは対応せず、若い番号の盤が優れるとも、新しい品番の再発が劣るとも限らない。
実盤での品番の読み
US Columbia の CS-8864 と刻まれた盤は、品番から 1963 年頃の US ステレオ LP と読める。ただし Terre Haute か Pitman かはランナウトの工場記号で初めて絞れる。Parlophone の PMC 1202(Please Please Me UK mono)でも、品番だけでは 1963 年初期 cut と後年の再発は切れない。
品番の確かめ方
品番は、盤を読む最初の索引として扱う。価格や希少性は品番だけからは判断できない。
ジャケット背表紙や表紙、ラベル、帯の品番を読む。接頭辞で国、レーベル、モノ/ステレオの当たりを付け、数字のブロックで年代の幅を絞る。通販では、ジャケット品番、ラベル品番、モノ/ステレオ表記の 3 点が写真で確認できるかを先に見てよい。3 点のどれかが読めない、または食い違うときは版断定を保留してよい。
針を落として、品番が示すミックスの聴こえ方を確かめる。同じ CS 8864 でも、工場と cut 世代の差で、高域の抜けや定位の前後感は変わることがある。
ラベルとマトリクス・ランナウトで版を検証する。品番が原盤国の定番番号と一致しない国内盤は、別編集や別カットの入口になりうる。刻印の文字列が読めたら、版情報サイトや手元の資料で同じ品番の別プレスと並べてよい。
最後は、手元の盤が実際に鳴らす音で判断する。mono と stereo のどちらか、どの国の編集かといった聴き方を先に確かめ、品番の古さや番号の大小には頼らない。品番は針を落とす前の下調べであり、版を確定するには音とランナウトの確認が要る。