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用語

10インチ(10-inch)

2026年6月17日
10-inch

10インチとは

10 インチ(10-inch)は、盤面の直径がおよそ 10 インチ(25 センチメートル)のレコードフォーマットを指す。7 インチ12 インチのあいだに位置するサイズで、現行の流通では 7 インチや 12 インチほど頻繁には出会わない。

同じ 10 インチでも、回転数(RPM)の組み合わせで役割が分かれる。78 RPM のシングル、33⅓ RPM の LP(long play)、45 RPM の EP(extended play)やシングルがある。直径は共通でも、溝の刻み方と 1 面の収録時間は回転数で決まる。

回転数で分かれる10インチの種類

直径と回転数

レコードのフォーマットは、直径と回転数の組み合わせで整理される。10 インチ盤の代表的な組み合わせは次のとおりである。

回転数おおよその 1 面時間主な用途
78 RPM約 3〜3.5 分シェラック時代のシングル
33⅓ RPM12〜15 分初期 LP、ジャズやポップの短編アルバム
45 RPM9〜12 分EP、一部シングル

回転数が同じなら、直径が小さいほど 1 面に載せられる溝の長さは短くなる。10 インチ 33⅓ RPM は 12 インチ LP より 1 面あたり 7〜10 分短い。収録曲数や曲順の設計は、盤サイズに合わせて切られる。

78 RPM の 10 インチ

10 インチ 78 RPM は、20 世紀前半のポピュラー音楽の標準サイズだった。Victor が 1901 年に 10 インチ 78 を発売し、従来の 7 インチより再生時間が延びた。1 面はおよそ 3.5 分が上限に近く、曲はその枠に収められた。シェラック製で脆く、ビニール LP 以前の主流フォーマットである。日本の中古市場では SP 盤と呼ばれる。

33⅓ RPM の 10 インチ LP

1948 年 6 月、Columbia が LP を発表したとき、10 インチと 12 インチの2 サイズを同時に提示した。マイクログルーヴと 33⅓ RPM の組み合わせで、10 インチでも 1 面 12〜15 分まで載せられるようになった。

1950 年代前半のジャズとポップでは、10 インチ 33⅓ RPM が事実上の標準だった。Columbia の CL 6000 系列(ジャズ・ボーカル)や ML 4000 系列(クラシックの 12 インチ)のように、レーベルはジャンルごとにサイズを使い分けた。1955 年前後から 12 インチ LP がアルバムの主流になり、10 インチ LP の新規発行は減った。

45 RPM の 10 インチ

10 インチ 45 RPM は、EPや一部シングル向けのフォーマットとして使われる。1 面 9〜12 分程度まで伸ばせる。7 インチ 45 より線速度を稼ぎやすく、12 インチ 33⅓ より枚数を抑えられる。物理的には両者の中間に位置する。

2000 年代以降は、限定盤や Record Store Day 向けに 10 インチが再登場する。ジャズやインディーの短編アルバム、オーディオファイル向けの分割再発など、用途は限定だが生産は続いている。

直径と音質の関係

針が拾うのは溝の通過速度(線速度)である。同じ 33⅓ RPM なら、10 インチは 12 インチより外周でも内周でも線速度が低い。高音の微細な振れは線速度に依存するため、同条件のカットでは 12 インチのほうが解像度の余裕が出やすい。

一方、10 インチ 33⅓ RPM は 1 面が短いぶん、プレス工程のカッティング制約(長い面ほどレベルを落とす必要が生じる)を受けにくい。1950 年代のジャズ 10 インチは、曲数が少なく 1 面の収録時間も短い。アルバム全体を 12 インチ 1 枚にまとめる再発版と比べ、曲あたりの溝幅とレベルに余裕が残っていることがある。直径が小さいことが、そのまま音質の劣化を意味するわけではない。

10インチ初版と12インチ再発の違い

1950 年代のマイルス・デイヴィスやソニー・ロリンズの初期 LP は、10 インチ 33⅓ RPM で出た。後年 12 インチ LP に再編されると、曲順は組み替わり、追加曲も載る。同じタイトルでも、10 インチ初版と 12 インチ版で収録内容は一致しない。

78 RPM の 10 インチ盤を中古店で見つけた場合、ビニール LP 用の 33⅓ RPM 設定では正しく再生できない。針の形状とトーンアームの追従も、マイクログルーヴ LP とは別物として扱う。

中古で10インチを選ぶときの確かめ方

10 インチは、希少さや高級さの印ではない。先に確かめたいのは、直径、回転数、収録内容の組み合わせである。

盤の外径を 7 / 10 / 12 インチで見分ける。10 インチは 12 インチより 1 回り小さく、7 インチより大きい。ラベル33⅓ RPM / 45 RPM / 78 RPM 表記と、品番の系列を読む。レーベルごとに 10 インチ用の品番系列が分かれることが多い(例: Columbia は 10 インチ初期 LP に CL 6000 系を使った)。

ジャケットの外寸も 10 インチ用に小さくなる。ジャケットと盤のサイズが食い違っていないか確かめる。

届いてから、ターンテーブルの速度を表記どおりに合わせる。78 RPM 盤を 33⅓ RPM で回すと約 0.4 倍速になり、ピッチが大きく下がる。33⅓ RPM の 10 インチ LP は、12 インチ LP と同じ速度設定で再生できる。各面のリードインでノイズを聴き、外周と内周で高音の立ち上がりを確かめる。

マトリクス・ランナウトが読めたら撮影し、手元の別版や版情報サイトで同じ文字列を探してよい。A 面と B 面の曲順も、10 インチ初版と 12 インチ再発で一致しないことが多い。

同タイトルに 10 インチ初版と 12 インチ再発があるなら、収録曲数と曲順を並べてよい。10 インチ版は曲数も少なく、1 面の時間も短い。版の違いは枚数だけではなく、どのミックスやテイクが載っているかでも出る。10 インチを聴くには、その回転数とサイズに対応した針と再生環境が必要になる。

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